【練習・試合にて:その2】

 

5)バッティングがやっぱり大好き!

 子供たちはみんなバッティングが大好き。自分が力一杯打った打球が遠くに飛んでいった時は、まさに快感といえます。バッティングが嫌いな子は大抵自分が打てないと思っている子です。本当は打ちたくて仕方がないのです。

 筆者はバッティングの練習は気持ちよく打たせてやる、打てるようにしてあげることが基本だと考えています。つまり、バッティングピッチャーなら打ちやすいコースに球を投げてやります(ただし試合を想定した練習のときは異なります)。投球の速さは、バッターの実力に合わせて加減します。打てない子やフォームを固めようとするときなどは、下手投げでロングトスでもいいと思います。バッティングピッチャーの注意する点は、大人が投げるとリリースポイントが高すぎる場合があることと、必ずしも山なりのボールが打ちやすいわけではないということです。大人の投げる高いリリースからの山なりは、遅くても子供には打ちにくいボールです。これはロングトスでもいえることです。

 小学1年生くらいで野球を始めたばかりの子だと打てないことですぐにやる気を失います。そこで筆者は、まずドッジボールくらいの大きなゴムボールを打たせたりしました(あまり重いボールを打たせると手首を痛めますので注意)。そしていろんな大きさのボールを用意して打たせます。小さな子供たちは大きいボールが打てると、どんどん次の小さなボールに挑戦していき、結構盛り上がります。最後はゴルフの練習用の穴の開いたプラスチックボールを打たせました。小さな子供たちは楽しく一生懸命やっているうちに、打ち方を学んでいきます。打つことの楽しさ知ると、野球がやりたくなり、野球が好きになってくると思います。

 筆者は、小学生の間はとにかくたくさんボールを打たせることが重要だと思います。練習でボール球をフルスイングして空振りするのもいいんです。もちろんボール球も上手に打てばいいんです。どんなスイングで、どのポイントで打てばボールはよく飛ぶのか、どのコースが打ちにくく、どのコースはどうして打てばいいのかを感覚と肉体と頭脳で学習していきます。「ボール球は打つな!」という指導より、子供自身が学ぶようにさせることが理想的な指導ではないでしょうか。

 バッティング練習は、バッティングピッチャーを相手に一人が打って大勢が守るというように効率が悪いことがよくありますが、そこは練習の工夫次第です。グループに分け、ティースタンドでのティーバッティングやバトミントンの羽打ちなどいろんな練習のグループを作ってローテーションします。とにかくいろんな練習でたくさん打つことが目標です。ただし、素振りはとても大事な練習なんですが、どうも子供たちは飽きやすいようです。素振りが自分のバッティングフォームづくりに欠かせない練習であることを理解できるようになるといいんですけど。一方、やってはいけない練習はバッティングフォームを崩すような練習です。これは個人のレベルによって異なりますが、ティーバッティングでトスを速くしてどんどんボールを投げるとか、あまりにも重いバットでの素振りなどもフォームを崩す可能性があります。

 バッティングにおいて、重要なポイントとは何か…シンプルに考えてみると、①バットが思いきり振りきれること(バットを振る力をつける)②ボールを後から強くたたけること(よいスウィングを身につける) ③タイミングがとれること(バットの始動とミートポイントをつかむ)。バッティングの目当ては、ほぼこの3 つに集約されるを思います。これらの目的を達成するために、指導者・コーチは練習メニューを組んだり技術指導をしなければならないと思います。そして何よりも、バッティングの楽しさを感じさせてやり、もっと速い球が打てるようになる等、そのレベルを高めてあげていただきたいと思います。

6)ピッチャーはかっこいい!

 野球を始めた子供はみんなピッチャーに憧れます。それはかっこいい主役にみえるからではないでしょうか。例えれば戦隊ヒーローのリーダーみたいな感じです。子供たちが憧れるなら、その気持ちをかき立ててやることのも上達へのモチベーションになります。ただし安易なおだては禁物です。ピッチャーをするには、コントロールやルールの知識など何が必要なのか教えたり、速い力のある良い球を投げるにはどうすればいいのか指導します。

 試合で誰が投げるかは、監督が決めることです。「この試合は○○君に投げてもらう。彼は今調子がいいからね。二番手は△△君。準備をしておくんだよ」選んだ理由は細かく説明しなくともいいですが、監督が意志をもって決めたことを子供たちに全員に話します。先発がしたいと懇願する子には、今回の選考理由を改めて説明したり、本人に必要な課題を与えてやるのがよいでしょう。もちろん課題に答えれば、チャンスを与えます。チームが強くなるためには、全員の力が必要なことをわかるようになると一番良いのですが…とにかくヒーローひとりでは野球はできないのですから。小学生ならチーム内はみんなピッチャー候補です。ピッチャーをやりたい子には出来るだけチャンスを与えてあげます。練習試合、紅白戦、バッティングピッチャー、コーチとのピッチング練習…など、いろんなチャンスで子供は才能を開花させるかもしれないのです。

 指導者・コーチが注意するべきことは、子供の才能を決めつけないことです。ピッチャーとしてのずば抜けた才能があるかどうか、小学生の歳でわかるはずがありません。なぜなら子供は成長するからです。ただし、指導者・コーチは現時点でのピッチャーへの適正を考えることは重要です。例えば、ケガをしない良い投げ方をしているかどうかを見極める必要があります。投げ方は悪いが、速い球が投げられるからという理由でピッチャーをさせていいのではありません。今速い球が投げられても、将来肩や肘を痛めて野球が出来なくなってしまってはいけないのです。「お前の力を俺は信じてる」などと、さも人情味ある態度をとりながら、試合に勝ちたいためだけに選手の起用を考え、子どもの将来を無視した愚かな指導者が実際数多くいるのです。そして、大好きな野球やスポーツが出来なくなった子供たちがたくさんいるのです。指導者・コーチは、教えることの責任についても考えていただきたいと思います。

7)子どもたちは何をやりたいのか

 筆者は練習の時、子供たちにどんな練習がしたいかよく尋ねました。それは、それぞれの子供が今どんなことに意欲や遊び心を持っているかを知るためです。もちろんやりたいことをやらせれば楽しそうに積極的に練習に取り組むことが期待できます。しかし、指導者として子供たちのために考えた練習プランがあるので、プランに近いものを選ぶか「今日はこういう理由でこれをしよう」とこちらから提案することが多いです。時には、前回の試合での結果などから子供に何をした練習した方がよいか質問することもあります。

 野球の練習といえば、毎回大体やることが同じではありませんか。ウォーミングアップ→キャッチボール→バッティング練習かノックなど守備練習→クールダウンなど、基本の構成はどんなチームでも変わらないと思いますが、その中身も毎回同じでは子供たちも結構飽きてしまいます。そこで子供たちのやりたい気持ちを刺激できるようなメニューを一日のところどころに挟むことが刺激になると、筆者は考えています。極端な話、野球に飽きたらちょっとくらいサッカーで足腰を鍛えたっていいのではないかということです。ただし、楽しく遊ぶのとは違います。サッカーならボールを追う走り方を練習するなど課題をはっきりさせ、遊びと練習の切替をきちんと行わなければいけません。

 子供たちを刺激するためには、指導者・コーチはいろんな練習メニューを考えたり、学んだ方がいいと思います。子供たちがやらされている練習ではなく、子供たちがやりたくなってしまう練習、興味を持つ練習ができれば、上達への近道になるのではないでしょうか。

8)プレッシャー:メンタルを考える

 「最近の子供はプレッシャーに弱い。メンタルを鍛えなければ」という方々に時々出会いますが、プレッシャーとはどんなものなんでしょう。辞書によると『(抜粋)圧力。特に精神的圧迫』と書かれています。野球の試合でいえば、守備ではピンチの場面、攻撃では得点のチャンスなどがプレッシャーのかかる場面といえるでしょう。こういった場面でのプレッシャーを克服するためには、本人が練習や心構えなどによって精神的な自信を持ち、状況に動じないようにすることが必要です。もしくはメンタルトレーニングなどによって平常心を作り出す訓練をすることもひとつの方法です。人の字を書いて飲み込むような暗示もメンタルコントロールのひとつです。とにかく大事なのは、平常心を持ち混乱せずに、今ある目前の問題に対処する方法を考え、実行することだと思います。

 プレッシャーから脱する方法としては、例えば選手に声を掛け『君の今の気持ちはわかっている』という理解者になってあげる事や、「この場面では、低めのボールを強く叩くことだけに集中しろ」と明確な指示を与えてやることなどが考えられます。ゴルフなら、ミスショットをしてもボギーなど悪いイメージを考えずに、次はどこにボール打てばよいのか、そのためにはどんなスウィングをすればいいのかだけに気持ちを集中させるのと同じです。直前のミスショットは忘れて、気持ちを次の集中にうまく切り替えるのです。

メンタルは『鍛える』というより『上手にコントロールする』方法を身につけることが、プレッシャーに強くなる近道だと思います。どんなに修羅場をくぐり抜けてきたプロゴルファーでさえ、プレッシャーに押しつぶされそうになるのですから。

 ところで、プレッシャーと緊張は若干違うように思います。プレッシャーは大体悪い結果を考えてしまいがちですが、緊張は準備が必要などんな場面でもあることです。極度に緊張している選手は体が力みがちなので、リラックスさせるために、声かけや笑顔などで安心感を与えるといいでしょう。人によっては、緊張感で神経がぴりっと引き締まったようになり、感覚がとぎすまされるという場合もあります。

 さて筆者が危惧するのは、指導者・コーチが選手・子供に与えるプレッシャーの問題です。『エラーをするな』『三振はいかんぞ』『四球をだすな』こういったマイナスイメージを与える指導は、まさにプレッシャーです。大きな声でのどう喝や怒ることも同じです。選手はプレッシャーからやってはいけないマイナスイメージを思い描き、消極的になったり混乱したりして良い結果が出せないケースがあります。中にはそういう指導者からのプレッシャーを応援だと思って上手に自分の力にしてしまう子もいますが、これはメンタルが強いと言うよりは個性の問題でしょう。とにかく、言葉ひとつで子供たちの心がプラスになったりマイナスになることを、指導者・コーチは心して欲しいと思います。

 そして、試合だけでなく、練習でもプレッシャーがあります。例えば「全員でボール回しをエラーなしで50球。誰かエラーしたらやり直し」といわれれば、エラーの不安がある子は、緩いボールを投げたり、捕球も慎重になり動きが固くなります。できるだけみんなに迷惑を掛けないように、失敗しないよう心がけます。もしそんな状態なら果たして良い練習といえるでしょうか。もちろん「エラーなしで続けろ」などの指導で自信をつける子供もいるでしょうし、決して悪い練習とはいえません。しかしコントロールに自信のない子は、だんだん肘が下げ気味になり、腕を押しだすように力のないボールを投げることがあります。しかも肘を下げているので、故障の原因にもなります。守備練習で「どこに投げてるんだ!」と怒られた子の努力の結果が、自らの体を悪くし、野球の上達を阻害していくのです。これは指導者・コーチのプレッシャーこそが原因なのです。プレッシャーに弱い子供が悪いのでしょうか。メンタルが弱いと野球がうまくならないからつぶれてもいいのでしょうか。指導者・コーチは子供たち一人一人をしっかり見つめ、指導の言葉や練習内容に十分に注意されることをお願いします。

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