【練習・試合にて:その3】

 

9)元気な声を出そう!

 子どもたちが野球をしていると、大きな声が聞こえてきて今日もがんばっているんだなぁと感じます。しかし少年野球の現場では「元気な声が出ない」と嘆いている指導者もいます。そういうチームは、大抵子どもたちに「声を出せ!」と指導しています。中にはボールを投げる前に「声を出せ」、ボールを受ける前に「声を出せ」バッターボックスに入ったら「声を出せ」守備についたら「声を出せ」と、とにかく声だし指導をやり続けます。中には、声が出ていない罰則として、その子供を朝礼台に立たせ大きな声が出るまで叫ばせる指導者もいます。そんなことをして声が出るようになるんでしょうか。確かに筆者も、子供たちには元気な声を出しながら野球をやってほしいと思いますが、なぜ出ないかを考える必要があります。例えば、練習や試合を楽しんでいないこともその原因の一つと考えられます。

 元気な声はやらされて出るものではなく、自発的に出るものではないでしょうか。やらされているうちは、いつかまた声はなくなります。子供たちが声を出すことの必要性を理解し、声を出すことが良いことであることを体で覚えなければなりません。子供たちは本当に楽しかったり意欲があるときは、大きな声が出やすいと思います。遊んでいる時は、みんな大きな声ではしゃいでいるのをよく目にします。そこで例えば、大きな声を出す楽しさを味合わせてみるのもいいと思います。筆者は、個人ノックをする時にこちらが大きな声を出して「名前は?」と叫び、相手にも大きな声で名前を言わせます。もちろん怒ってはいません。「さぁ、これから一緒にノックを楽しむぞ」という雰囲気を作ります。気分が乗ってくると「もう一本!」と子供から大きな声が帰ってくることもあります。つまり互いに大きな声で楽しむのです。

 声を出すことの必要性という点については、声は野球で大きな武器になることを教えます。守備ではチームの仲間がいることが伝わり、声で互いに指示すれば守備力はアップします。また、選手同士でもっと話をすることを子供たちにすすめます。アウトカウントの確認や、次はどこでアウトにするかなどなど確認し合います。声を出すことは、緊張を緩和したり、集中力を高める効果もあります。決して相手を威圧するものでもなく、一生懸命やっているフリをするためのものではありません。自分たちのために、自分の心の中から出すものなんです。きっとチームが一丸となって、気持ちが乗ってくれば、子供たちなら大きく元気な声をだしてくれるはずです。指導者・コーチは声を出させるのではなく、雰囲気作りから取り組んでみてはどうでしょうか。

10)昼ご飯を観察する

 筆者はできるだけ子供たちと昼食を共にして、いろんな話を彼らとしました。堅苦しく言うと、彼らと交流し、性格や心のうちを感じ取ることが目的です。そして同時に彼らがどんなお弁当を食べているか観察します。よく食べる子、小さなお弁当の子、栄養の偏っている子、揚げものの好きな子、弁当屋のお弁当の子、菓子パンばかりの子…食事の傾向や事情がそこには垣間見られます。筆者がお弁当の内容に文句を言うことはまずありませんが、あえて言うとすれば、お弁当のない子の場合です。お昼を食べないと体も動きません。空腹になると集中力も落ちます。同様に朝食を食べてこない子は注意し、ご家族の方にも朝食を食べさせるようお願いします。食事や睡眠など不規則な生活は、子供の心と体の成長に良い影響を与えません。食はコンディショニングにおいて非常に大切な要素です。指導者ならば多少注意を払うことが必要と思います。

 昼食時には、子供たちはいくつかのグループに分かれて食事をします。どんなグループになっているか誰と誰が仲がよいのか観察します。注意するのは、一人で食べる子どもです。どうして一人なのか尋ねたり、いっしょに食事をします。心的なマイナス要因があるようなら、ご家族と話してみることもあります。

 食事休憩とはいえ、練習とはまた違った場面での子供たちから何が発見できるか見逃せません。でも、一番大事なことは、子供たちといっしょに楽しく食事をすることなんですけどね。

11)根性をつける?

 根性とは、辞書で見ると『(抜粋)その人の本来的に持っている性質。または、物事をあくまでやりとおす、たくましい精神。気力』とあります。スポーツの世界では、どうも『たくましい』というより『我慢強い』というようにとらえがちではないでしょうか。辛い練習に耐えれば、根性がついたと思っていませんか?果たして痛みや苦しみに耐えることが、たくましい精神を培ってくれるでしょうか?

 筆者は、『根性』とは『ねばり強い、あきらめない心』ではないかと考えています。では、そのねばり強い心・根性をつけるにはどの様にすればよいのでしょうか。結論から考えれば、すべては個人のもつ性格によると思います。しかし、少年野球の指導で出来るかもしれないこととなると、『目標に達するためには努力が必要である』ことを教え、『たゆまぬ努力があれば目標に達することが出来る』ことを実感させてやることではないでしょうか。『自分が頑張れば(努力=練習)→出来た(結果=達成感・喜び)』を経験させてやるのです。この時、注意することは目標設定をあまり高くしないことです。漠然と『全国優勝』などというものより、『バントがうまくなる』『先発で一勝』といった自身がやればできそうなことにしたほうがよいでしょう。短絡的で諦めの早い子の多くは、努力が苦手なように思われます。「努力は疲れる」「そんな目標なんてはじめから無理」と思う子は、なかなか達成感を味わうことは出来ないでしょう。また結果を求めて努力しているにも関わらず、目標に達せない子どもは「努力なんて無駄だ」という考えを持ってしまいます。しかし『努力』の大切さや『努力によって出来た喜び(達成感)』を実感したことがあれば、困難や壁にぶち当たっても信念を貫き通して成し遂げる『たくましい精神=根性』が養われていくことが期待できるのではと、筆者は考えています。そして、野球において努力をもって目標に達するためには、『野球が大好き』であることが、もっとも大きな原動力だと思います。くれぐれも“ウサギ跳び”では、根性は養えないことをお忘れなく。

次のページへzhi_dao_lun04.html
zhi_dao_lun04.html
zhi_dao_lun02.html
前のページへzhi_dao_lun02.html

12)クセは直すべきか否か

 スローイングにしても、バッティングにしても、とにかく子供たちは個性的なフォームをしています。プロ野球選手もいろんなフォームの方がいます。とりあえず個性とクセはほぼ同じ意味とここでは考えます。指導者・コーチが注意しなければ行けないのは悪いクセです。つまり悪いフォームや悪い動きなどですが、むずかしいのはクセの善悪の見極めです。イチローの振り子打法や野茂英雄のトルネード投法など今では認知されていますが、はじめて見たコーチは直したくなったのではないでしょうか。しかし、彼らは指導者に恵まれたのか、自らのスタイルを磨いて素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。

 筆者が思う悪いクセは、ケガの原因になるフォームや、まちがった動きです。前者は理にかなった体の動かし方をしていない場合、後者はバッティングで脇が開いてドアスウィングになるといった、まったく無駄な動きのことです。例えば、どんなに速いコントロールのいいボールを投げていても、リリースで肘が(ゼロポジションより)下がっていたり、肘の伸展で投げているようなら直した方が良い、悪いクセと考えます。一方、バッティングで構え方はやたらと変ではあるが、ボールをきちんととらえ打っているなら、そのままやらせます。もちろんハッキリした原因で直し方も分かっている場合は指導して直します。

 子供たちは、大抵自分のフォームをかっこいいと思っています。だから、いきなりコーチに変えられると迷路に迷い込んだようになることがあります。また体の動きは、全身の一連の流れで構成されているため、あるポイントを直そうとするとバランスを崩してしまい、直す前より悪くなることがよくあります。

そのためクセを直すときは、強引にせずに、しっかりと子供に分かるように説明し、長い目で見ることが大切です。ひと言で治るようなら、クセと云うほどではありません。

 そのままで伸びる、才能の花開く可能性のあるクセもあります。子供体は成長します。筋力がつき、感覚が変わっていくと、体の使い方が変わりフォームは少しずつ変わっていきます。子供自身は、自分が最も投げやすいフォームや打ちやすいフォームを、ほぼ無意識にしていることが多いです。つまり、そのクセは本人の体にとって、最も理にかなったフォーム=スタイルなのかもしれません。そのため筆者は、現時点で十分な力が発揮できているなら、そのクセをあまりいじらないように心がけています。ただしケガの要因になりそうな傾向があれば、要注意しながら様子を見たり少し修正を促します。指導者・コーチの中には、子供のフォームを自分のイメージ通りでないからすぐに直したがる人がいます。でも、そのコーチの理想は果たして真の理想的なフォームなのでしょうか。感覚や運動特性の違う子供たちが揃ったチームの全員を、同じフォームさせることは不可能ですし、何よりも可能性を秘めた個性をつぶすことにもなり得ます。理にかなったフォームについて知識があれば多少指導もできるでしょうが、筆者が思うフォームづくりとは、その選手・子供の世界でたった一つの体に合うフォームを子供と共に創造していく作業といえます。

 筆者の場合、例えばバッティングで悪いフォームが原因で打てない子がいたら「ここが悪いから打てないんだよ。試しにこうしてごらん」と別のプランを提案してみるようにします。そして、いろいろ試してみて本人が納得いくものがあれば、それを続けていけばいいと思っています。嫌なら辞めれば良いんです。時間がかかるかもしれませんが、結果が少しでも出れば理解してもらえるはずです。ピッチングはバッティング以上に、フォームを直すために相当な時間と辛抱が必要です。どこかを直せば今までのバランスが狂い、コントロールがメチャクチャになることもあります。「今はコントロールが悪くてもいいんだ。フォームを直しているときは当たり前なんだ。とにかくここだけを注意しなさい」と子供に教え、互いにねばり強く練習に取り組まなければなりません。また子供自身が直したいと思うようにならないと、クセを直すことは困難です。だから直すべき心のタイミングを待つことが必要なことも多いです。慌てず焦らずがじっくり待つことが、クセを直すためには必要なのです。監督・コーチは多くの知識と柔軟な創造力をもって、子供たちの個性をじっくりと見つめてあげてください。