【コーチングについて:その1】

 

1)どうしてコーチになったのですか?

 少年野球のコーチなるきっかけはいろいろあると思います。監督やチーム代表に依頼され招かれる事もありますが、最も多いのは自分の子供が野球チームに入ったのを機にそのチームから誘われたというケースです。もちろん誰もが基本的に頼まれたからコーチになったはずです。では、なぜ頼まれたのでしょう。野球の経験者だから?教育熱心だから?人手が足りないから?休日に参加できるから?車を持っているから?コーチを依頼された方はその理由を把握しているのでしょうか。またチームの方針を知った上でコーチを引き受けたのでしょうか。自分の子供が辞めたらコーチも辞めるのでしょうか?もちろん依頼する側もその人の野球論などをある程度知った上で、コーチになってもらったのでしょうか。そしてコーチを引き受けた方は、何をしなければいけないのか分かっているのでしょうか?子供たちの心や体に対して責任を負っていることを理解されていますか? 子供たちに野球を教えるといっても、ゴロの取り方ひとつにしても教え方は千差万別です。安易に引き受け球拾いのつもりが、突然鬼コーチになったり、テレビで見ただけの野球理論を語りはじめたり、なんだか変なコーチが世の中にはいっぱいいるのです。

 筆者はコーチになるきっかけ自体は何だっていいと思うのですが、コーチと呼ばれる皆さんには、なぜコーチになったのか、そしてコーチは何をすべきなのかよく考えて、チームの子供たち全員と向き合ってほしいと思います。

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2)少年野球のコーチの役目とは

 コーチの仕事は、プロ野球などでは大かた分業になっていて、打撃・守備・投手・バッテリー・走塁・トレーニング・コンディショニングなどに分かれており、監督やヘッドコーチがそれらを統括しています。少年野球でも同じように分業にしているところもあるようです。プロ野球のコーチは基本的に勝つための指導や管理をするのが仕事です。では、少年野球のコーチは何が仕事=役目でしょう?

 少年野球のコーチは、野球をするための体づくりや技術指導を行うことはもちろんですが、その根底に

あることは『子供たちの心と体の健やかな成長をお手伝い』することではないかと筆者は考えています。野球を通して社会的で健全な人間になってほしい、又そうなれるような力を身につけてほしいと思うのです。甲子園に行ける選手を育てたり、いつも全国大会に出られる強いチームを作ることが主目的ではありません。そして、小学生で野球がずば抜けてうまくなくても、将来伸びる心と体の基礎づくりをしてあげたいと考えています。そのためにもケガをしない体づくりや指導が大切であり、自立心をもった考え方ができるよう促してあげることがコーチの仕事=役目として重要ではないかと思います。

 少年野球のコーチといえば、球拾い、バッティングピッチャー、ノッカーをやればいいんだ…今日はフライの取り方でも教えてやるか…などと表面の項目だけに目をやらず、ぞの役目を、その責任をしっかり考えた指導をコーチの方々にはお願いしたいです。子供たちと共に、夢中になってボールを追いかけ、試合に一喜一憂することだけが素晴らしいと思っているコーチの方は、今一度コーチの役目について考えてください。

 世間には、間違った体の使い方を教えるコーチがいます。子供の心を無視したコーチがいます。「礼儀を重んじろ」と言いながら挨拶もできないコーチがいます。子供利用して自分が指導者・コーチであることを楽しんでいる人がいます。それらの指導者やコーチの多くが「私は子供たちのために命をかけているんだ」などと語り、自らの過ちに気づいていません。

 少年野球のコーチは教える立場にあります。教えると云うことは自らを正すことからはじまります。


(追記)

 コーチとは、自らの役割の中でその能力を発揮することを、監督などに期待された人です。監督の言うとおりにただ動くのがコーチではありません。コーチは監督の手下や子分でもありません。あるチームの監督は「俺はつい熱くなって子供たちを怒ってしまうが、子供が理解できないようだったらコーチが後でフォローする、これはコーチの役目なんだ」と言いました。つまり、この監督は「俺は情熱的でウソなどつかないストレートな人間だ。良いコーチは監督をフォローするものだ」と言いたいのでしょうか。感情的に怒るだけ怒っておき、自分の感情的な指導は棚に上げ、その尻ぬぐいをコーチにやれと言っているように、筆者には感じられます。しかし、コーチは監督の道具ではありません。コーチも一人の人格であり、監督のためにいるのではなく、子供たちのために存在しています。監督の指導方針を理解し協力するのもコーチですが、共に尊重し合い力を合わせチームを築いていくことが重要だと、筆者は思います。

3)入りやすい開かれた門

 少年野球において、指導者・コーチと子供たちの関係、もしくは距離感はどういったものが理想か考えてみましょう。コーチは威厳を持って、子供にとって少し怖いくらいの方が緊張感があって、子供たちも学ぶ意識が高くなるとお考えの方もいるでしょう。もしくは、子供の目線に立って親しみやすい雰囲気で、子供と一緒に楽しく野球をする方がよいという方もいるでしょう。こうした師弟関係的の距離感は、指導者・コーチ自身の個性であり、一概にどうしなければならいという答えはありません。自分なりに、自分ができるやり方で、何より今目の前にいる子供たちにとってどういう態度がよいのか考えればよいと思います(ただしコロコロ態度が変わるのは問題外)。ただしコーチングとして重要なことは、選手・子供たちに対して常に『門が開かれている』ことだと筆者は思います。つまり、子供たちがいつでも何か困ったときは、指導者やコーチに声が掛けられるような雰囲気が必要だということです。ケガをした時や痛みのある時、プレーに迷いがある時など、それらを隠してプレーしていてはいい結果は得られません。もちろん子供たちが自分の感情を表現できないような現場では、子供たちの個性を理解し活かすことは出来ません。

 『入りやすい開かれた門』には『信頼関係』が必要です。どのような距離感の雰囲気であっても『信頼関係』がなければ、互いに意味のある会話はできません。もちろん子供たちがその指導を信じて練習することもありません。威圧感で指導することは、時として信頼感を不信感に変えてしまうことがあります。威圧感で指導する方の多くは、自分の立場を誇示し保身することを目的としているように思われます。また「なめられたら子供は言うことを聞かない」と思っている方は、子供たちと信頼関係が築けていないのでないでしょうか。コーチが門を閉ざしては、子供たちの心の門も開きません。

 選手から困ったときに助けを求められる事は良いコーチの条件といえます。子供たちにいつでも手を差しのべられるよう、指導者・コーチは心の門を開いておいてください。

4)父親コーチのやってはいけないこと

 少年野球ではコーチの多くが、我が子がチームに入ったのを機に監督らから誘われ就任したケースが多いように思われます。そうしたコーチ(父親コーチ)は休日になると、子供と共に練習に行き一日を共に過ごします。ところで父親コーチには、指導の上でいくつか注意すべき点があるように思います。

 まず、子供たちを全員同じ視点で見てあげることを忘れてはいけません。我が子をひいき目に見たり、逆に過小評価したりしないようにしなければいけません。こうした区別は、他の子供たちが敏感に感じ取ります。言葉遣いにしても注意をしたほうが良いでしょう。子供によっては、我が子と自分の扱い方が違うと思うと戸惑いを感じる子供もいます。また、我が子のふがいなさに苛立ち、他の子には絶対しないような罵声やきつい指導をしてしまうコーチもいますが、これも絶対やめて欲しいことです。我が子が萎縮するばかりでなく、他の子供たちまでひいてしまいます。

 次に、我が子を指導の材料にしないことです。我が子なら、少々きつい言葉遣いで指導しても大丈夫だろと考え、見せしめように厳しく指導するコーチがいます。これは他の子供に威圧感を与えることを目的にしています。一方、我が子は「どうして僕が…」という気持ちになります。これでは信頼関係も揺らいでしまいます。

 もう一つは、自宅に指導を持って帰らないことです。もちろん我が子と一日の練習を振り返ったり、アドバイスは良いと思いますが、必要以上のだめ出しは禁物。一日中コーチにだめ出しをされては、子供もたまったもんじゃありません。大人だって、会社の上司が家までついてきて、仕事のミスをグチグチ言われたら嫌なはずです。グラウンドではみんなに教えるコーチとして、家に帰れば我が子を応援する父親でいてあげるようにしましょう。家に帰ってからの練習も、子供自身がやりたいならば手伝うことも良いですが、「素振りをやりなさい」とやらせるのは薦められません。オンとオフの切替をきちんとした方が親子互いに良いと思います。

 分かっていてもなかなかできないのが多くの父親コーチの悩み。我が子には、人一倍頑張って欲しい、活躍してほしいのが親の願いなのですから。しかし、父親コーチは自分自身にこそ厳しく指導を心がけましょう。


追記)父親コーチに限らないことですが、指導者やコーチを続けていくには家族の理解が必要です。休日になると野球漬けでは、家族との大切な時間も失われがちです。父親コーチの方で野球をしている子以外に兄弟がいる場合は、その兄弟が休日過ごしてもらえないことを口に出さなくとも、心では何か感じていることも考えられます。子供時代は二度とかえってきません。中には野球に夢中になりすぎて、家族のことが後回しになってしまうコーチもいます。父親コーチはまず家族のことをよく考えて欲しいと思います。