【コーチングについて:その4】

 

13)『怒る』と『叱る』

 子供達の人間的成長や技術的向上を助けるためにも『叱る』ことは大切です。ただし、感情的になって『怒る』のではなく、冷静に『叱る』、つまり「なぜ君は叱られるのか」「どうすればいいと思うのか」考えさせる努力が必要です。感情的になるのは、情熱的だからと勘違いしないでください。すぐに『怒る』のは、冷静さに欠けるかミスしか見えてない短絡的思考といえます。ただの怒鳴り声は、暴力以外の何者でもありません。またミスを『怒る』指導者は「ミスは選手のせいである」として、自らの指導を正当化しようとしているともとれます。また、試合中に感情的に怒っている指導者は、感情がコントロールできずに既に負けているのです。

 ミスが起こったときはまず、なぜミスが起こったのかに目をむけなければいけません。心理的なことか技術的なことか、ミスという事実ではなくその発生の過程が重要です。また『叱る』時は、相手である子供の性格を考えながら、叱らなければなりません。ミスを理解できるのか、萎縮してさらにミスを犯すのか…ここでも一人一人の個性を見ることが重要になってきます。子供に合わせて多少の演技力も必要です。別コラム『私論・野球指導用語』あとがきにも書きましたが、その理由を子供が理解できなければ『叱る・怒る』意味がありません。

 『叱る』タイミングを計ることもコーチングのテクニックの一つです。叱らずとも、子供自身が気づいて自分で何とかしようとしているなら、それは自立心をもった成長のチャンスといえます。何でも指摘・指示することが、良い指導というわけではありません。

 コーチの特定の子供への態度が、チーム内でのその子供の評価になってしまうことも忘れてはいけません。「あいつはいつも怒られてるから下手くそ」といった風潮は、チーム力を崩壊させます。

『怒る』『叱る』の与える影響をも見すえた、冷静な指導こそが本当に情熱的をもった指導といえます。


※ちなみに辞書(抜粋)によると…

 ■おこる【怒る】=不満•不快なことがあって、がまんできない気持ちを表す。腹を立てる。いかる。

          よくない言動を強くとがめる。しかる。

 ■しかる【叱る・呵る】=目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる。

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14)『ほめる』と『認める』

 子供たちはほめられたり、認められることを皆喜びます。これは大人も同じです。

『ほめる』というのは、「よくやった」「いいことをしたね」など、ある行為に対して良い評価をするもので、感情的や道徳的なものも含めて評価として曖昧な部分があります。また、ある結果に対する一過性の評価であることが多く、選手・子供のモチベーションに良い効果を与えます。しかし、安易にほめすぎると、軽々しくウソっぽくなり、その効果は半減します。もちろん、子供がやる気を起こすからといって、そうでもないのに「すごいなあ」とか大げさにいうことは指導者として子供を軽視しているようにも思われます。

 コーチングにおいて人を『認める』ということは、「スイングが速くなったね」「コントロールがよくなったね」というように、選手が実際にできたことをそのまま口にすることで、選手に達成度を教える行為です。単にほめることとは違います。もちろん虚飾は不要です。人は誰でも、自分が実際にやったことを通して、自分の成長・変化を知ることに喜びを覚え、そのことに達成感を持ちます。そして、この達成感=自己成長感が「もっと上手くなりたい」というモチベーションを高めるエネルギー源となるのです。

 コーチは子供の『のびしろ』を認めてあげることも大切です。子供の現状を把握し、その先をイメージしてその子供にもイメージさせます。「ずいぶんスイングが速くなったから…次はこうすれば、もっとヒットもでるんじゃないかなあ」などと、次のステップや目標などを語ります。自らの将来像をイメージすることで、子供自身が自分の可能性を強く信じるようになれば、練習にもやる気がでてくる…かもしれません。結果はともあれ『のびしろ』を考えることは指導方法を見いだすためにも重要な作業です。

 『ほめる』『認める』にしても、良いタイミングを見計らうことが大切。必ずしもほめたり認めたりする必要がないことや、しない方が良いこともあるのです。子供の成長は、一時の『点』でなく『線』で見ることが必要です。『ほめる』『認める』も、その『線』上でベストタイミングを見つけれれば、最高の効果があると云えます。


※ちなみに辞書(抜粋)によると…

 ■ほめる【褒める・誉める】=人のしたこと•行いをすぐれていると評価して、そのことを言う。

               たたえる。祝う。ことほぐ。

 ■みとめる【認める】=1)目にとめる。存在を知覚する。気づく。

            2)見て、また考えて確かにそうだと判断する。

            3)正しいとして、また、かまわないとして受け入れる。

            4)能力があると判断する。

            5)気をつけて見る。じっと見る。

15)やる前に考える:アイシングで思ったこと

 試合会場で試合が終了すると父母会の方がピッチャーをした子供の肩や肘にアイスパックを圧着して『アイシング』をしているのよく見かけます。何故するのか尋ねると「コーチにやるように言われたから」と答えられます。『アイシング』は、スポーツの世界ではコンディショニングにおいて今では一般的で、プロ野球では試合終了後にピッチャーが肩や肘をアイシングしていることがよく見られます。そのせいか、アイシングは少年野球でも多くのチームで行われるようになりました。しかし、指導者やコーチは、アイシングの効果や根拠、適応について本当に理解した上で子供たちに実施しているのでしょうか。

 『アイシング』とは簡単に言うと、氷の入った氷のうやアイスパックを痛みや疲労感のある体の部位に圧着、冷却してそれらを緩和させるものです。本などの情報では多くの効果が上げられていて非常に良さそうだということは分かるが、一方で正しく実施しないと逆効果もあげられています。大抵は冷やしすぎによる機能低下や過敏反応などです。プロ野球でも、連投するピッチャーは翌日に筋肉の戻りが悪いからと避ける選手もいるそうです。また冷やしてはいけない持病を持っていたり、体質的に合わないなど、気をつけなければならないケースもあります。つまり『アイシング』は“ やれば良い” ではなく、“正しくそしてうまく利用する”ことが大切といえます。プロはその道の専門家がきちんと管理しています。目に見えない痛みや疲れを相手にする『アイシング』は、正しい管理や方法で行うことのむずかしさを抱えていることを忘れないでください。

 筆者がこの話でいいたいことは、正しい知識と責任をもって取り組んで欲しいということです。頼まれた人にも注意して欲しいです。云われたとおりにやった、時間通りにやったではおさまらない場合も起こり得るのです。プロがやっているからいいものなんだといって、安易に実行するのでなく、少し考えて欲しいんです。専門家の声を聞いてみてください。まず子供にやる前に自分でやってみてください。常に心にそれなりの責任を持って、物事を実行してください。

16)チャレンジ・チャンスをつくる

 子供たちは挑戦することが大好きです。だから子供たちのチャレンジ精神をうまくクスぐれば、かなりのハイテンションで力を発揮しようと頑張ります。 しかし、目標が高すぎたり時間がかかることだと飽きてしまいがちです。できるだけパッとできて、すぐに答えが出るものを好みます。

 例えば、練習内容にゲーム要素を入れます。ベースランニング・リレーやバントで目標枠に転がすとか、的にボールを当てるなど、遊び的運動が体力アップや技術アップにつながります。この時、上手にするヒントや技術的なコツを教えてあげるのも効果的です。特に低学年などは、こうした遊び的なチャレンジ・チャンス=挑戦機会を練習に組むことで効果があると筆者は考えています。

 また、練習の中に小さな課題を作ることもチャレンジ・チャンスです。「君は足が速いから、今日は紅白戦でセーフティバンドをやってみよう」などとチャレンジ課題を作って与えます。漠然と「コレをやりなさい」ではなく、課題として与え、その結果をその子供と話し合います。結果が良ければ、自信を持つ子もいます。結果が悪ければ、どうすればうまく行くか、子供自身から答えを引き出すように問いかけます。課題という設定をうまく作ることで、練習の中身を濃くすることが可能になります。

 長期的なチャレンジ目標としては“優勝”といったものになるかもしれませんが、個人で達成できるものではないのでやや漠然としてしまいがちです。もちろん一定期間かかるのものありますが、練習の中に努力すれば手が届きそうな目標をつくる=チャレンジ・チャンスで、達成感や自信を身につけて、野球に対する意欲を引き出してやってみてはいかがでしょう。


(補足)手の届きそうな目標へ堅実に歩み、その達成感を感じることで、さらに意欲を持って継続的に前進し              ていくよう指導することを『スモールステップ方式』といいます。