【子供の明日について:その2】

 
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5)現代っ子の体を考える

 最近の子供たちを見ると、その体格は筆者の子供の頃(1970年代)に比べて、全般的に背が高くなり、手足が非常に長く感じられます。腰骨の位置が比較的高く、足が長いなぁとうらやましく思う筆者です。しかし、同時に手足(骨格)の細さも感じられます。その一方で、ひと昔前も肥満の子はいましたが、最近の方が多いかもしれません。文部科学省が毎年実施している「学校保健統計調査」によると、最近は身長も体重もほぼ伸びが止まっているものの、平成13年と親の世代である昭和46年とを比較すると、11歳男子の平均身長4.5cm、14歳男子で4.6cm、17歳男子で2.6cm親の世代を上回っているそうです男女ともに肥満傾向児(性別・年齢別に身長別平均体重を求め、その平均体重の120%以上の体重の者)の割合は、昭和45年から平成12年にかけての30年間で増加していますが、特に男子では各年齢層ともおよそ2倍から3倍に増加している状況にあります。

 体格の変化の要因は、食生活と生活習慣の違いがよく云われています。食生活は栄養の充実と過剰、生活習慣は膝をついて(正座やあぐらなど)座らなくなった椅子の生活が考えられます。体格が欧米人並みに大きくなることは別に良いと思うのですが、筆者が不安に思うのは、やはり体の大きさに比べて体自体が強くない印象があることです。成長期の子供、特に小学5・6年生から中学生辺りは、体格が大きくなり筋力も結構ついているようですが、それを支える骨もしくは軟骨部分などが弱いように思います。もちろん成長期なので軟骨や腱などが未発達で弱い(まだ柔らかい)ことは当然ですが、筋力の強さに対してバランスが悪いように思うのです(筆者は学者でも医者でもないので印象で書いていることをご容赦下さい)。そのせいか最近は、肘や膝を痛める子供が多くなったのように感じます。ちなみに肘の障害は11~12歳が比較的に多いと聞きます。運動時、大きくなった体を動かすため、筋肉も強くなります。しかし成長のスピードはそれに追いつかず、筋肉の付け根である腱や靱帯は筋肉の引っ張りに耐えきれなくなり、障害を起こしやすくしているのではないかと思うのです。もちろん障害の要因はもっと多様なもので、医学の進歩によって障害の発見が早くなったことも、肘や膝の障害が多くなった理由のひとつでしょう。大きくなった体でも日常生活ではほとんど発症しないわけですから、おそらく肘や肩などの障害の多くは投球過多など過剰な使用や不合理な投球ホームがほとんどの原因でしょう。しかし、その背景には成長期の体のアンバランスがあるように感じるのです。(肩の障害については、筆者の印象では中学生以降に多く現れているように思います)


 子供たちの体に関しては、柔軟性とバランス感覚についても昔の子供と比べて気になる点です。柔軟性については個々の体質によって差がありますが、ストレッチをさせると体の硬い子と柔らかい子の差が大きいように感じます。体の硬さを歴然と感じるのは、膝や足首です。例えば、正座がきちんと出来ない子供や俗に言う“うんこ座り”がしっかり出来ない子供がたくさんいます。捕手の姿勢やゴロの捕球でも低い体勢をやりくそうにしていたり、辛そうにしている子がよくいます。また練習で足首の捻挫をする子も多いような気がします。膝や足首の柔軟については、昔と生活習慣が大きく違っており、正座をしなくなったことや、トイレが和式から洋式に変わったことが影響しているのではないかと考えられます。また、膝や足首と連動するように股関節も固いように思われます。膝、足首そして股関節と、野球には欠かせない重要な部位ばかりが昔より固くなったように思うのは極端かもしれませんが、あくまでも筆者の印象です。またこれらの部位は、ストレッチなどを習慣的にする事で、子供なら比較的容易に改善する可能性があります(ストレッチを習慣的に行うことが実は難しい)。膝の障害ではオズグッド・シュラッター病(脛骨粗面骨端炎)なども成長期の運動をする子によくあり、その要因は筋肉や骨端部などに起こるアンバランスのようです。

 バランス感覚については、ひと昔前と比べて劣っていると云うことではなく、そういう感覚を磨く機会が少なくなった、つまり遊びの内容や量が違うのかと思っています。木登りをしたり、屋根や塀に登って渡ったたり(怒られます)、ケンケンパーといった遊び(片足でバランスをとる遊び)などを毎日のように楽しんでいた時代と今は違います。近年、小学校でよく行っている一輪車はなかなか良いなあと思いますが、できれば片足で立つ運動を多くしてほしいと筆者は思います。

 文部科学省が行っている「体力・運動能力調査」によると、子供の体力・運動能力は、調査開始以降昭和50年頃にかけては向上傾向、昭和50年ごろから昭和60年ごろまでは停滞傾向、昭和60年ごろから現在まで20年以上にわたり低下傾向が続いており、平成12年の結果を親の世代である昭和45年調査と比較すると、ほとんどのテスト項目について子供の世代が親の世代を下回っているようです。

 また、部活動などで運動を日常的に行っている者の体力・運動能力は運動を行っていない者を上回り、体力・運動能力が高い子どもと低い子供の格差が広がるとともに、体力・運動能力が低い子供が増加。このことはスポーツ少年団や部活動などで運動をよくする子供とほとんどしない子供との、二極化傾向が指摘されていることと関係があるのではないかといわれています。この他にも、靴のひもを結べない、スキップができないなど、体を上手にコントロールできない、あるいはリズムをとって体を動かすことができないといった、子供が身体を操作する能力の低下も指摘されています。


※「体力・運動能力調査」のテスト項目

■小学生(6~11歳):握力・上体起こし・長座体前屈・反復横とび・20メートルシャトルラン(往復持久走)・50メートル 

 走・立ち幅とび・ソフトボール投げ

■中学生~大学生(12~19歳):握力・上体起こし・長座体前屈・反復横とび・持久走・20メートルシャトルラン(往復持久走)・50メートル走・立ち幅とび・ハンドボール投げ ※持久走と20メートルシャトルラン(往復持久走)は選択実施



 他にはテレビやゲームのせいか、目の悪い子(視力が低い)もかなり増えたのではないでしょうか。筆者が思うに、テレビゲームはストレスの解消やリラックス効果が多少あるかもしれませんが、逆効果もあるように思います。つまりストレスが残ったり、肩こりを引き起こす場合もあります。もちろん目には疲労を残すでしょう。テレビやビデオも同様に目に疲労を残しますが、心のリラックスという点ではお笑いや好きな映画を見ることは効果があるかもしれません。いずれにせよ睡眠時間を削るようではいけません。またテレビゲームが動体視力や反射神経のトレーニングになるとお考えの方もいるかもしれませんが、それは少し違うように筆者は思います。筆者の極論で云うならば、スーパーマリオやシューティングなどのテレビゲームを極めていき身に付くのは、心と体の機械化ではないかと考えています。情報を目から取り入れ、体が反応してボタンを押す。より正確に、より高速に動く機械のようになれば、ゲームは高得点をたたき出せます…また少し話がそれてきました(筆者反省)。


 では実際に、子供たちの野球がひと昔前より劣っているかというと、そうではないと思います。むしろ体が大きくなった分、パワーアップしているかもしれません。しかし、子供たちの運動量はひと昔前より減少し、走ったり投げたりする能力は平均で劣っていることが新聞やニュースなどでも報告されています。これは、日々の屋外における遊びの量の差ではないかと筆者は考えています。遊び場の減少、子供同士の縦関係の消滅、車の増加と危険、テレビゲームの人気など、屋外で伸び伸びと遊ぶ機会は大幅に減っています。現代の子供は大きな体で、ひと昔前の子供よりパワーアップできる肉体を持ちながら、それを養い鍛えるだけの運動をしていないのが現状ではないでしょうか。そのために怪我や障害が多くなる。小さな頃から毎日外で楽しく運動をしていれば、体と成長のアンバランスも少なくなると思うのです。運動不足を補うかのように、スイミングスクールや少年野球に通うのかもしれませんが、週2.3日と毎日とでは下積みが違います。当然ながら昔も今も体格や体質には個人差があり、運動能力の高い子もいれば低い子もいます。しかし、子供時代に秘められた能力(可能性)は、その力が引き出されるように使わなければ、高度には発達しないままに成長することになるでしょう。人間の力は、使うことによって順応、発達し、養われていくものだと思います。昔と今の子供たちの体の違いについて神経質になる必要はないと思いますが、体は使うことが大切だと筆者は考えています。そして一つの使い方に偏らず、いろんな使い方をすることが、個々の特性に応じた未知なる可能性を切り開いてくれるのではないかと思っています。


 文章が長くなりましたが、指導者の皆さんに念頭に置いておいていただきたいのは、昔の子供が出来たことが今の子供は苦手な場合もあるというです。「自分が子供の時はこうだったから、今の子供もできるはず」という考え方が当てはまらないこともあるのです。ひと昔前とは生活習慣・環境が違い、子供たちの体格が違うのです。自分中心の尺度で考えると、そこには落とし穴があります。しっかりと今の子供を、そして個々の子供の体格や運動能力をみてやることが大切ではないでしょうか。また、子供たちの体がどうような成長の段階にあるのか、どういう注意が必要なのか、少し考えて指導をしていただきたいと思います。



※前述の内容は、筆者が見聞してきた結果に思ったこと、感じたことを記述しています。全てが医学的な 

 検証を行ったものでなく、筆者が自らが調査研究したものでないことをご了承下さい。

(参照資料:野洲市体育・スポーツ振興審議会の答申書/平成21年3月・文部科学省「学校保健統計調査」「体力・運動能力調査」)

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