【子供の明日について:その3】

 

6)なぜ子供に野球をさせるのか

 子供がチームに所属し野球をはじめる場合、その動機の大方は子供自身にあり、場合によって親御さんが子供に勧めて入団させることもあるでしょう。どちらにせよ、最終的な決定権は親御さんにあるはずです。では、なぜ親御さんは子供たちに野球をさせるのでしょうか。

 野球をすることで、①心と体が鍛える②礼儀正しくなる③ルールを守る事を学ぶ④仲間をつくる⑤競争心を養う⑥根性をつける⑦努力することの大切さを知る⑧プロ野球選手になる。甲子園に行く…等といった期待を理由に野球を子供にさせている親御さんも多いのではないかと思います。他には、⑨ただ「好きなことをさせてやりたいだけ」といった理由もあると思われます。

 さて、①については漠然としすぎですが、体については運動を“しない”よりは“する”ことにはなるでしょう。体力づくりにはなるはずです。しかし、過度であれば怪我や障害の危険もあります。②の礼儀については人に頼るのではなく、親御さん自身が行うべきしつけではないかと思います。また、礼儀は野球から学ぶものではなく、人から学ぶものでもあります。③については、競技スポーツにおいて微妙なことです。つまり、ルールぎりぎりなら何をしても良い、反則をとられないのなら何をしても良いといった考えが結構はびこっているように思えます。サッカーのファウル行為やフェイク、野球での抗議や乱闘騒ぎなど、子供にあまりマネして欲しくないこともあります。④の“仲間をつくる”ことも一概には言えません。スポーツはある意味では競争社会です。仲良しではやっていられない場合もあります。⑤の競争心においては、良い意味で捉えると向上心や努力などに結びつきますが、仲間や相手を蹴落としたりバカにしたりすることや、逆に自らが弱者に陥るような悪い方向も考えられます。⑥は根性は、意味のとらえ方が多様なので一概には言えません。「なにくそ」「負けるものか」という気持ちを養える子もいれば、ただ嫌なことが増えるだけかもしれません。⑦の努力については、努力が結果に結びつく良い場合もありますが、体格など身体的な特徴のようにいくら努力しても実らないこともあります。⑧のように夢を持ち、目標を持って前進することは素晴らしいことだと思います。しかし現実を見つめれば、容易でないことが分かると思います。このような様々な理由から、野球をさせる親御さんは“野球にあまり期待しすぎない”ようにした方がよいと筆者は思います。あえていうなら⑨の「やりたいことをやらせてやる」というのが、もっとも健全な「野球をさせる」理由かもしれません。好きなことに打ち込むことは、その子供の可能性の扉を開けやすくするものだと思います。そして野球をさせるときに大人が注意すべきは、子供に過剰な期待をしたり、自分の夢を重ねたり託したりしないことです。子供には子供の自由な生き方があるはずです。

 「なぜ野球をさせるのか」筆者なりの結論を考えるなら、「よい人間に成長してもらいたい」というのが究極の答えかと思っています。子供たちが野球を通じて、その心と体を健全に養い育って欲しいというのが筆者の願いであり指導の目標でもあります。結論から考えると野球でなくても良いようですが、その子供が野球が好きならば、野球に取り組むことが心と体の健やかな成長のために役立つように思います。もちろん「野球が別に好きでないけど、とりあえず何かさせたかった」という動機だってかまいません。野球を始めてみて、子供自身の方向が少しでも見えてくればよいのではないでしょうか。 とにかく野球で何を得られるか何を失うかはわかりませんが、それはやりながらじっくり考えればよいのでないでしょうか。それが野球から学ぶことだと思います。

 指導者の方の多くは、野球が好きで、その素晴らしさ(?)や楽しさ(?)を子供たちに伝えたいと思って指導されていると思います。しかし、今一度「なぜ子どもに野球をさせるのか」という問題に向き合ってみてはいかがですか。誰のための野球か、何のための野球か、ただ野球をさせるだけでなく、大人なら少しは考えておく必要があるではないでしょうか。

7)オーバースローのススメ

 一般的に投球フォームは、①オーバースロー②サイドスロー③アンダースローの3タイプがあります。ワインドアップやセットポジションは投球時の姿勢を云うため、投球フォームとは区別します。またスリークォーターは、オーバースローの1つと考えます。どの投げ方が良いかは、個人の体の使い方や感覚が、どのフォームにマッチするかで決まります。指導者・コーチがアドバイスすることがあっても、押し付けたりするものではありません。

 少年野球において特に注意してほしいのは、サイドスローとアンダースローです。個人的な見解ですが、サイドスローとアンダースローをさせたがる指導者は意外といるのですが、その中でこれらのフォームを正しく理解している方は少ない気がします。指導者の中には「うちの先発はオーバースローだから、リリーフをする投手にはボールの出所の違うアンダースローをさせよう」という変な考え方の人もいます。中には「チームのためにサイドスローにしろ」なんて訳のわからん指導者だっているのです。

 サイド&アンダースローに投球フォームを変えた子供たちで起こりうる良くない結果は、オーバースローだったが肘を下げることで、ボールを置きにいき、コントロールが良くなったと勘違いするケースです。ボールを置きにいくと、ボールの回転が落ちキレがない棒玉になり、急速も落ちます。長く続けていると、肘を下げたことによって肩・肘に痛みを発することも考えられます。もちろん、これは筆者の私的見解であることはご了承下さい。しかし、オーバースローであろうがアンダースローであろうが、人体のメカニズムに違いはないので、正しく使わなければ結果的に無理が出ることは間違いないと思います。

 少年野球においては、筆者は絶対にオーバースローをオススメします。その理由は、ケガをしにくい投げ方を習得しやすいということと、将来どのポジションを守るかまだ分からない子供たちにはもっとも基本的なスローイングの習得をさせたいからです。良いスローイングは肩の力(もしくは機能)を無理なく使い、切れの良い(回転の良い)ボールが投げられます。できればその感覚を身につけてから、投球フォームを変えたほうがいいと思います。ややこしいフォームをさせず、ケガをさせすず…指導者・コーチの皆さんには、子供たちの将来を見据えた指導をしていただきたいです。

8)子供時代に運動神経を鍛える?

 運動神経とは、辞書によると以下のように載っていました。


 ■うんどう‐しんけい【運動神経】

  1)意識的な運動をつかさどる末梢神経。

    骨格筋を収縮させる興奮を身体の末端まで伝え、随意運動を起こさせる。

  2)スポーツや技能などを巧みにこなす能力。


 一般的にスポーツの良くできる子供は、“運動神経が良い”と言います。つまり、自分の体を上手に使える、もしくは求められる動きに対して力を効率よく、すぐに発揮できるという事で、意味合い的には前述の(2)が優れているということでよく使われているのではでしょうか。

 では、どうすれば運動神経が良くなるのか?筆者の考えとしては、その子供の持って生まれた資質(もしくは素質)によって運動神経が優れているかはほぼ決まっているものだと思います。しかし、その資質の個人差に見合う形で、運動神経は訓練や経験によって養われていくものだと思います。また、個人の資質・経験・体力・精神などによって運動能力が伸びる時期には個人差があり、必ずしも同じトレーニングをすれば全員が同じ結果にはなるというわけではありません…あくまでも極私的見解ですよ。


 小学生の間は、スポーツにおいては上達が早く、特に9~10歳辺りは神経系の発達が著しいことから『ゴールデンエイジ』と云われています。つまり、神経系の発達はこの時期に著しく伸び、10~12歳でほぼ大人と同じレベルに達するそうです。そのため小学生の後半期は体の動かし方が著しく上手くなります。もちろん、12歳以後も運動能力を高め、様々な動きを習得可能ですが、学んだ運動をすぐに体現できるようになる『ゴールデンエイジ』と比べるとそのスピードではかないません。そういった点を踏まえて考えると、運動神経を養い鍛えるならば、子供の時に積極的に色んな運動を行い、継続的にトレーニングしていくことが有効である、という当たり前のような結論になります。


 では、子供時代に鍛えておきたい神経系能力について考えてみますと、筆者としては『バランス感覚』『動体視力』『タイミングをとる』という3点が重要かと思っています。特にこの3点は、大人に成長してからは鍛えにくい要素であり、多くのスポーツに関係があるのではないかとはないかと思います。

 “バランスをとる”と云うことは、体のバランスを感じるという感覚機能と、倒れないようにバランスをとるために体をコントロールする神経及び筋肉の使い方を養わなければなりません。ピッチャーやバッターのように一本足で立つこと、転びそうになりながらも体勢を立て直すことも、バランス感覚が必要です。『動体視力』は、動いている物体を視線を外さずに持続して識別する能力をいいます。そして『動体視力』で得た情報を一瞬に分析し、“タイミング”を計って体を動かすことは、神経の連携による複雑な活動が関わっています。これら『バランス感覚』『動体視力』『タイミングをとる』を養うことは、野球の練習にはたくさん含まれています。『バランス感覚』は前述の通りですし、『動体視力』『タイミングをとる』については『打つ』『捕る』といった行為に含まれています。つまり日々の練習の中で何気なく行っているですが、これらの点に特に注目してみると練習やトレーニングの見方・方法が変わってくるかもしれません。例えば、筆者の場合、試合などでも絶対にしなくちゃならいことではないけどと前置きを置いた上で、ジャンピングスローの練習をさせました。簡単に言うと右投げの二塁手が二塁ベース際の打球を捕球して振り向きながらジャンプして一塁に送球するというものです。実際の練習では、捕球はせずにボールを手に持った状態で、ジャンピングスローだけを繰り返し行います。このジャンプを右足踏み切りと左足踏み切りの2種類行います。これはどんな状況でもバランスを崩さずに送球するトレーニングですが、こういう事もやっておこないといざという時に体は動いてくれないと思うのです。一昔前は結構遊びの中でいろんな投げ方や捕り方をやっていたものですが、最近は基本基本といって変わったことをさせたがらないようにも思います(一方で変わったトレーニングのやり過ぎもあります…注意)。とにかく同じ動き、同じ運動だけでなく、色んな体の使い方を子供の時に経験しておけばいいのではないか…そうした経験によって神経が動きを認知しておけば、目には見えないかもしれませんが、いつか結果が実るのではないかと甘~い期待をしています。


 運動神経から話が迷走してしまいましたが、とりあえずここらで失礼します