【続・コーチングについて:その2】

 

5)物真似のススメ

 最近、野球をしている子供たちはプロ野球選手の物真似をしなくなったように思います。一昔前に比べたら個性的な選手が減ったのかなぁと思うことはありますが、イチロー(マリナーズ)やラミレス(読売巨人)、青木(ヤクルト)などのバッターは十分個性的です。テレビで試合をあまり見ない子も多いようです。筆者が子供の頃は、テレビで見る個性的な選手、例えば長島や王、田淵、掛布、落合、谷沢…とあげればきりがありませんが、その物真似をして草野球をしました。真似をしても簡単にうまくなるわけではありませんが、何かを学んでいたような気はするのです。ボールの捕り方や守備の動きなども真似することで、こうすれば上手になるのかなぁと思ってやったものです。筆者はグラブトスをテレビで覚えました。物真似の良いところは、コツのようなものを学べる点です。真似ることでメチャクチャな動きになることもありますが、上手くできなければ続けることもありません。個性あるプレー、特にバッティングなどは、その人にとってその動きがやりやすい場合や、欠点を矯正するためなどで、その個性的スタイルが決まります。イチローのバッティングは、イチローだからこそ理にかなっているのであって、他者にそのまま当てはまるものではありません。しかし、どこかにヒントはあると思います。感覚と使い方は違いますが、同じ構造を持つ人間です。真似ることで、何かを学べれば儲けもの…ぐらいの気持ちで真似るのがいいかもしれません。ぜひ子供たちには、プロ選手や高校球児の良いプレーを一度は真似してみて欲しいです。

 最近の子供はテレビで試合をあまり見ないと書きましたが、プレーを見ることはある種のトレーニングになると云われています。人は目で動きを捉えることで自らの脳と筋肉に刺激が伝わっていると、ある運動の専門書に書かれていました。実際にプレーをしなくとも身体に情報として伝えられているというのですから、“見て学ぶ”ことの重要性がうかがえます。ということは、物真似の有用性が裏付けされているとも言えます。

 物真似についてもう一つ。指導者・コーチは物真似上手になった方が良いということです。筆者は、子供たちへの指導で「君のこういう打ち方が良くないよ」と説明するために、その子供の打ち方を真似してみせます。このように指導に物真似をとり入れることで、話しているポイントが言葉だけでなく動きでも伝えることが出来、その子供だけでなく他の子供たちにも伝わりやすくなります。また、指導者・コーチ自身も子供のクセを真似ることでどこがおかしいか良いのかを分析しやすくなります。もちろん、指導者・コーチがプロ選手を真似ることで、新たな野球理論が見つかるかもしれません。

 考えてみれば、上手い人の真似をしながら学んでいくのは、どんな世界でも同じです。指導者・コーチの皆さんも、ぜひ物真似を意識して指導方法に取り入れてみてください。

6)道具を大切にするココロ

 野球をする者にとって、グラブやバット等の道具は絶対不可欠です。道具はある意味、身体の一部とも言えます。バットは腕の延長であり、グラブは手そのものです。スパイクやヘルメットなどの道具類もその役割は大きく、プロは皆それなりのこだわりを持ってオーダーメイドなどを行っています。イチロー選手は道具を大事にすることで有名です(メジャーの選手は道具を乱暴に扱う人が多いらしいです)。イチロー選手は他人のバットを触らないそうで、その理由は自分のバットと違う感覚のバットを手にして、自らのバッティングそのものの感覚に狂いが生じるのが嫌だそうです。

 野球の道具が自分の身体の一部と考えるなら大切にするのが当然だと思うのですが、意外と子供たちはそうではないように思います。練習中、グラブやバットを放り投げたりする光景をよく見かけます。アルミの金属バットなどは、グランドの砂地でこすれて傷だらけになっています。また、練習で雨が降りグラブやスパイクが濡れても、放っておいたままなんて事もよくあります。子供が道具を大切にしない理由は、子供自身の性格によるところがほとんどでしょうが、少し時代性も感じます。筆者が子供の頃、グラブは滅多に買えるものではないし、自分のものという思い入れもあり、愛着を持ってとにかくボロボロになっても使っていました。但し、扱い方は現代の子供たちの多くと同じように乱暴だったと思います。現代の子供たちはモノに恵まれていますので、グラブが傷む前に新しいものを購入したり、「ご褒美だ」「誕生日プレゼントだ」といろんな機会に新しいモノを手に入れるようです。中にはバットを何本も持っている子供もいます。親御さんの中には、モノで野球に対するモチベーションを揚げさせようとする方も多いようですが、その効果は一過性でしかないことがほとんどです。確かに恵まれていることは良いことだと思いますが、道具に対しての思い入れが希薄になっていることは残念に感じます。もちろん、どんなに思い入れがあっても、サイズの合わないものや壊れたり、形崩れて使いにくくなったものは買い換えたりすることが必要になってくるでしょう。サンタにもらった大切なビニール製のグラブも、実用的ではありません。自分にしっくり合う道具に出会うことはむずかしいことかもしれませんが、そのために何度も買い換えたりすることはあまり良いようには思いません。プレーの良い結果を新しい道具に求めても解決にはならず、自らのプレーの本質もしくは技量が重要であることが忘れられている場合があります。グラブやバットは最適なサイズのものを長く使うことで、自らの感覚とマッチしてきます。新品が使いやすいとはかぎりません。特に硬式のグラブなどは新品は革や芯が固く使いにくいですが、手になじんでくると、まさに世界にただひとつの、自分の身体の一部となっていきます。プロ野球選手が三振をした後バットを折ったり、グラブをベンチで叩きつけたりしている光景が時々ありますが、いろんな意味で筆者は残念でなりません。

 筆者の知るあるチームでは、スパイクの手入れが出来ていないと試合に出してもらえず、当日会場での隅でスパイクを磨いている子もいました。こうした指導の理由は、試合にはユニフォームを含めきちんとした身なりで出場するべきだという考えがあるからです。それは野球に対する礼儀もしくは真摯な態度といえるかもしれません。リーグによっては試合前に道具の審査があり、グラブの紐がきちんと結べていないと注意されます。硬式ですと金属バットにひびが入っていると危険です。つまり道具をきちんと手入れすることは、よいプレーをするためだけでなく危険を避けることにも繋がっています。

 筆者はよく子供たちがベンチなどに並べているグラブやバットを見てチェックをしました。そして手入れの出来ている子は褒めました。また時には「道具は君の仲間です。グラブなんかは大切にしていっぱい使えば、君の身体にだんだんぴったりになってきて、世界にたった一つの自分のグラブになるんだ。それに、きちんと手入れして仲良くしていれば、いざというときでも紐が切れたりせずに、君に力を貸してくれるよ」などと話しました(素直に聞くはあまりいませんでしたが…笑)。

 指導者・コーチの方には、子供たちに道具をどう扱えばいいのかを指導してあげて欲しいと思います。単に「大切にしろ」ではなく、手入れの仕方や仕舞い方、雨の日の処理、もちろん扱い方などを具体的に教えて欲しいと思います。意外と正しい手入れの仕方を知らない子供が多く、親御さんも知識がないことが多いようです。野球が上手になるためには道具の準備が不可欠であり、道具の協力無くしてはプレーが出来ないのです。子供たちには、イチロー選手のように道具は自分の身体の一部であり、野球のパートナーとして愛着を持って付き合ってほしいと思います。

4)柔軟性と筋力を考える

 一般的に『身体が柔らかい』というのは、身体を曲げたり、開脚したり、腕を回したりするとき等の可動域が幅広いということだと思います。そうした『身体が柔らかい』を、ここでは『柔軟性がある』と考えます(学術的な定義でなく、ここだけの話です)。もちろん個人差はありますが、子供たちの多くは特別なトレーニングをしていない大人に比べ、身体が柔らかいです。それは筋肉や腱が弾力性に富んだ、若々しい質だからだと思います。その性質から考えれば、可動域を広げてやるためには子供の頃は絶好の時期だと思います。

 では、どうして『身体が柔らかい』方が良いといわれるのでしょうか。筆者の考えでは、まず怪我をしにくい身体になると思います。そして可動域が広いと云うことは、高い運動能力が期待できます。例えば、関節部分が硬ければ捻挫などを起こしやすくなります。また可動域が広ければ、歩幅も無理なく広がり、一歩が大きくなり足が速くなる可能性もでてきます。肩周りが柔軟性に富んでいれば速い球を投げる期待もできるのではないかと思います。特に野球の投げる・打つといった動きは、関節をひねり筋肉をねじるような動きから力が発揮されます。つまり、筋肉の質に加えて関節部分の役割も重要になってきます。

 柔軟性に富んだ柔らかい身体を作るために、足を伸ばして座った状態で爪先に手を伸ばして身体を曲げ

たりします。それを背後から誰かが押したりします。いわゆる『静的ストレッチング』ですが、注意してもらいたいのは他者の力を借りてやる場合、痛がっているのに無理矢理押したり曲げたりしないことです。せっかくのストレッチで腱や靱帯を痛めてしまうことがあります。ストレッチ自体の意義・方法・効果はここでは書きませんが、正しく行わなければ効果どころか怪我をしてしまうので気をつけてください。ですから子供の場合は一人で、正しいストレッチを行うことをオススメします。

 次は『筋力』について。筋力アップを目的としたいわゆる『筋トレ=筋肉トレーニング』ですが、子供時代にやることに関しては賛否があると思います。成長期にある子供が過剰に筋トレをしたならば、まだ柔らかい筋肉の付け根=腱を傷めかねません。また筋肉の成長は、高校生ぐらいが一番望めるときだそうです。筆者の印象で極端な見方ですが、ボディビルダーは剛速球を投げませんし、足も速いようには思えません。また独特の姿勢のせいか、手足の可動域も狭いように思えます(あくまでも印象の話です)。野球では重いものを持ち上げられたりする能力よりは、瞬時に動ける筋肉(神経も含めて)こそが役に立ちます。むしろ鍛え作り上げるなら瞬発性に飛んだ筋肉であり、質の良いゴムのような(伸びたら弾力ですぐ戻る)筋肉づくりこそが必要だと筆者は思います。

 子供の筋力と柔軟性を鍛えるために筆者がオススメしたいのは、『動的ストレッチング』と『動的筋トレ(?)』です。『動的ストレッチング(ダイナミック・ストレッチング)』とは個人で行うもので、様々な動作を取り入れながら身体全身を効果的にストレッチしていきます。サッカーなどで取り入れられているブラジル体操などもその一つで、エリートスポーツではよく行われています。筋温の上昇と動き作りの両面が可能なため、トレーニング効果も期待できます。正しい方法は専門トレーナーにきくか、専門書を参考にして下さい。『動的筋トレ』は、特に専門用語でなく筆者が考えた言葉です。つまり、腕立てや上体起こし腹筋などなど、部分的な筋肉を集中して鍛えるのではなく、身体を動かしながら力をつけようとするものです。例えば、おんぶ走り、馬跳び、バービー、棒登りなどです。賛否はありますが、SAQトレーニングも良いと思います。もっといろんなトレーニングがありますが、決まった筋肉だけを刺激するのではなく、身体のいろんな部位を使う運動が望ましいでしょう。力と動作を上手に使うようにするトレーニングといえるかもしれません。筆者が教えていたときは、寒い時期になるとアップ時後半にこうしたトレーニングを増やしました。遊びのようですが、きちんとやればりっぱな体づくりになります。ただし、あまりにも体重の重い子をおんぶする等やり過ぎは厳禁です。そして、ふざけるのも危険ですので注意が必要です。腕立てなどいわゆる『筋トレ』も過剰でなければ多少は良いと思いますが、バーベルやマシンなどの道具を使うのでなく、あくまでも自重(自分の体の重さ)をつかったトレーニングのほうが良いと思います。

 子供は本来、柔軟性に富んだ身体と弾力性に富んだ筋肉を持っています。それらの能力を高めるためには、いろんな運動を楽しみ、いっぱい動き回って、いっぱい遊べというのがもっとも良いのかもしれません。

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