【続・コーチングについて:その3】

 

7)ピッチャーへの適正

 日々の練習の中で、指導者は子供たちそれぞれの技量や特長、そしてチーム戦力を考慮しながら、守備のポジションを検討します。ポジションの決め方は、指導者の価値観・好みで決まるもので、基準はありません(いろんな定説はあります)。少年野球において、ポジション決めでもっとも悩むのが投手=ピッチャーです。試合を試合らしくするために、ピッチャーにはストライクを投げる力はもちろん、きちんとルールが理解できているか等の最低条件も求められます。

 それでは、筆者がピッチャーを決める際に考慮するポイントをあげてみました。























 上記の条件をどの満たしているか、複合的に考慮してピッチャーを選びます。そして不足するものがあれば、その点を指導してピッチャーらしくしていきます。上記の中で最も重要なのは『a) ヒジの高さ・腕の振りが正しい』つまり理にかなった投げ方をしていることでしょう。もし理にかなった投げ方をしていない子供がピッチャーをした場合、障害を起こす可能性は高くなります。障害を起こせばこれからの一生にも関わることになるかもしれません。ピッチャーをすることで球速が速いこともピッチャーにとって大切なことであり、素晴らしい素質として認めますが、小学生の間は球速は二の次のような気もします。正しい投げ方ならば、成長すれば必ず球速は上がります。a~c) は運動能力であるため先天的な潜在能力(資質)がある程度求められるでしょう。d~j ) については、訓練や意識改革によって身につけることが可能だと思います。尚、ここでは変化球に対するセンスは考慮しません。球速に関しては、体の小さい選手より体の大きな選手の方が腕が長いため、速くなる可能性は高いと云えます。しかし、投球はいろんな意味でバランスが重要です。球が速くても制球力がないとダメですし、もちろん牽制を含めた守備も出来なければなりません。そういう点ではやはりチーム内でも野球が上手な子供がやることになるようです。

 選手の適応を考える場合、重要なポイントは将来性を考えることです。子供たちは将来どんな選手になるかは分かりませんが、その子にとってどういうポジションを経験することが今後のモチベーションや体づくりに繋がっていくかを配慮することが大切です。試合に勝つポジション編成も重要ですし、一人一人の子供のことを考えると九つのポジションに振り分けることは難しいことです。しかし、可能性を秘めた子供たちを開花させるためにもよく考えて、ポジショニングを行っていただきたいと思います。

 各ポジションの適応や特長については、また別の機会に書きたいと考えています。

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〈ピッチャーの適正条件とその理由〉

a:ヒジの高さ・腕の振りが正しい  →投球の負担による傷害を起こしにくい

b:全身を使ってダイナミックに投げる

 →無駄な力を使わず、肘・肩への負担も少ない持久力も期待できる

 ※腕に力みがなく、下半身主導の動きができている

c:ボールがよく回転している→指が良く掛かっている・腕の振りが正しい

 ※ただし回転方向に注意(変化する球は要注意)

d:ピッチャーのモーションルーチン(決まった動き)ができる

 →試合に出られる ※牽制も出来れば良し

e:制球力がある=ストライクが投げられる →ゲームメイクできる

f:守備や走者に目が配れる     →守備のリズムを考えられる・冷静である

g:アウトの取り方を理解している  →投げた後の動きができる

h:闘争心と冷静さを兼ね備えている →力を出し切れる(逃げずに・力まず)

i :負けず嫌いである        →バッターと真剣勝負ができる

j :結果を人のせいにしない     →責任感がある

8)野球の6・3・3について 〜少年野球という期間と流れ~

 まずはじめに『野球の6・3・3』とは、小学校6年間・中学校3年間・高校3年間の期間を云っています。つまり、大学をのぞいた学童・学生としての野球経験期間です。日本的野球でいえば、甲子園(選抜高等学校野球大会・高校全国高校野球選手権大会)という憧れの目標へ歩む期間でもあります。野球人生の一つの区切りである高校卒業後は、プロや社会人という職業としての野球や、基本的に趣味としての野球への道もあり、将来の生活を見据えた選択が重要になってきます。また、大学は学業もしくは能力がある基準以上でなければ入学できず、プロや社会人は選ばれなければ入団できません。いうなれば『野球の6・3・3』は、基本的に誰でも野球ができる期間であり、野球に本当に熱中できる期間だと思います。但し、技術レベルやチーム事情、経済力等の理由で、入学や入部に制限があるなどの例外もあります。


 多くの野球好きの子供たちが『野球の6・3・3』に野球を学び、自らを鍛え磨きます。では、それぞれの期間について考えてみました。

 まず小学校6年間は、はじめて野球チームに入る機会となります。早い子供は小学1年生から、遅い子供でも5年生から入団します。いずれにせよ、技術や知識などもっとも野球の基礎を学ぶ期間です。入団時期や諸事情によって異なりますが、指導者側から見ると、この時期は比較的長い期間指導ができます。つまり長いスパン(時間の幅)で子供の成長を見ながら指導が出来ます。長く付き合うことから子供の性格もつかみやすく、指導も個別対応が可能です。また技術的な成長も著しいので、指導の結果が早く出やすいともいえます。結果が比較的早く出て期間も長いので、次のステップへ進みやすいといえます(同様に修正もしやすい)。

 中学での野球は、学校の部活動や地域のクラブチームへの入部・入団します(軟式・硬式・準硬式があります)。小学生でしていた野球とは違うパワーアップした野球に出会うことになります。一般的な成長の過程から考えると、中学時期の主な目標は体づくり、体力づくり、変化球なども含めた高度な野球への下地作りと筆者は考えています。しかし現実は、レギュラーになり試合に勝つことが重視されます。つまり試合に出る者と出ない者に分かれていきます。力の差を目の当たりにしたり、試合に出られないことから野球から離れていく子供もこの時期に多いです。中学時代の試合成績は、強豪高校への進学および野球部入部の条件にもなってきます。そういった点でも、中学での野球は体力づくりなども含めて、高校で野球をするための準備期間といえます。

 高校での野球は学校の部活動で、硬式か軟式に分かれます。もちろんチーム事情、チームカラーによって違いはあるでしょうが、まさに『優勝』こそがチームの目指す頂点になります。そして甲子園などの全国大会という目標に向かって、『勝つための野球』を行います。勝つための技術を磨き、勝つための体力をつけ、そしてレギュラーになるために誰よりもレベル高いの野球を身につけようと練習します。内容的には、初心者など入る余地はなく、レベルが低ければ練習にもついていけません。

 中学・高校での野球期間は、おおかた2年半で、3年生の夏の大会が終わった時点で引退になります。全国的に強豪といえる学校の場合は、国体や世界大会などもあり、選ばれた選手はもうすこし長い期間野球ができます。また中学の硬式などクラブチームになると状況は様々で、秋頃まで試合がある組織もあります。しかし、おおかたの中学・高校共に、野球で鍛錬するのは約2年半弱の短い期間です。つまり、小学生の時のようにじっくり野球の技術を「学ぶ・教えてもらう」というのではなく、自分自身の「努力」こそがもっとも重要になってきます。


 筆者が皆さんに考えていただきたいことは、野球をする期間の流れのようなものです。例えば、小学生で基礎的な動きや知識を学び、また正しいフォームや野球のコツ(感覚)を身につける。中学では、体力をつける。高校では体力・技術をさら極め、6・3・3の最終到着点での自らのレベルを見極める。こういった流れを、念頭に置いて小学生を指導していくことも必要ではないかと思うのです。つまり、この子は今どういったことを身につけた方がよいのか考えるとき、高校3年から逆算的に考えてイメージしていくのです。もちろん子供は大きく変化しますので誰にも未来を予測は出来ませんが、今どうするのが良いのか少しは考えられるはずです。例えば、小学生の今、怪我を抱えながら無理して野球をするのではなく、高校でその才能が花開くように、小学生の残り期間は無理のない体力づくりをしながら怪我を治すといった風なこともそうです。「肩を痛めているが優勝のためにはこの選手に投げさせるしかない」といった考え方は、子供の将来の野球を考えない自己満足でしかありません。進学予定の中学の野球部はどうしても入りたくないのなら、野球にこだわらずに他のスポーツをしても良いのです。他のスポーツで体力をしっかりつけるのも、高校野球への準備と考えればあり得ます。プロ選手の中には中学でバスケットをしていて高校で野球に戻った人もいます(阪神の矢野 燿大捕手は学校に野球部がなかったためバスケットボール部に所属し、高校で野球部に入りました。ただし中学の間野球の練習をどれくらいしていたかは分かりません)。また、甲子園に出たいのならどうすればいいのか、プロ野球選手になるには今何をすべきなのか、逆算的に考えても良いと思います。


 前述しましたことは、明らかに私的視点にたったものの見方です。別項では「指導の目標は人間的な成長」と言いながら、今度は「目標は甲子園」などと言い出していますが、甲子園が全てではないことをご理解下さい。重要なのことは成績より人間の本質にあります。

 それぞれの時期に何をするべきなのか、今は何をすべきなのか、ぜひ指導者の皆さんも『野球の6・3・3』について考えてみてください。(またもや内容がまとまりませんでした…筆者反省)